・フローティング機構とは
広角レンズでは、
「フローティング機構を採用し、
どの撮影距離でも最良の画質が得られます」
といった説明があったりします。
このフローティング機構とは何なのか。
フローティング機構がないと画質が悪いのか。
まずそのまえに。
レンズのフォーカシング方式には大きく分けて三つあります。
・全群繰り出し方式
・前玉繰り出し方式
・インナーフォーカス
全群繰り出し方式は、
レンズ全部を前後に動かしてピント位置を見つける方法です。
無限遠ならばレンズの主点とセンサ面の距離が焦点距離になります。
レンズの玉全てを動かすので、モーターのトルクが必要です。
そのため、AFスピードはどうしても遅くなりがちです。
しかし、全体を動かすために、被写体距離によって
収差のでかたが変わることがありません。
近接撮影でも無限遠撮影でも安定した性能が得られます。
前玉繰り出し方式は、
レンズの前玉や前群だけが移動する方式です。
レンズ内で各玉の位置関係が変わるので、
被写体距離によって収差の変動が大きく
像性能が変わります。
ズームレンズに多く用いられています。
インナーフォーカス方式は、
レンズの中玉を動かしてピントを合わせます。
レンズの全長が変化しないことが特徴です。
設計が難しいのですが、最近は技術の向上で
メインの方式になってきています。
前玉繰り出し方式と同様に、レンズの一部だけを動かすため
収差変動が激しいのが欠点です。
また、設計を工夫して動かす玉をとても軽くすれば
高速AFが可能なレンズになります。
話を戻して、フローティング機構ですが
フローティング機構が入っているレンズは
大抵、広角レンズです。
一眼レフの広角レンズはバックフォーカス(バック寸)の関係で
レトロフォーカスタイプの設計になっています。
レトロフォーカスタイプはレンズの前群と後群の対称性が悪いので
収差が大きく発生してしまいがちです。
さらに、広角レンズでは比較的遠距離被写体を撮ることが多いので
遠距離被写体撮影での性能を重視して設計されます。
すると、近距離撮影では収差が大きく発生します。
特に像面湾曲。
上の図のように、ピント位置によって
レンズ群をそれぞれ独立して動かすことで
どのピント位置でも最良の像が得られるようになっています。
フローティング機構は原理的にはズームレンズと同じです。
« ・RAWで何とでもなるので撮影時はテキトーでいいのか | トップページ | ・ディストーションと絞りの関係 »
「写真講座」カテゴリの記事
- ・面内ブレ(ブラー)を防ぐ(2024.09.12)
- ・星をより輝くように見える現像方法 (疑似ソフトフィルター)(2024.09.01)
- ・アトムレンズの黄変を直す2(2024.08.12)
- ・laowa 10mmF2.8 ZERO-Dを確認(2024.07.31)
- ・laowa 45mm F0.95で星撮影/ホタル撮影(2024.07.28)
コメント