・彩度と自然な彩度の違い
フォトショップなどAdobeの製品で
彩度をコントロールする項目で
「彩度」と自然な彩度」の二つの項目があります。
一般的には「彩度」の項目は全体的に彩度を変更する、
「自然な彩度」は彩度の低い部分だけの彩度を上げて、
けばけばしくならないように彩度調整ができる、
と言われています。
実際にどのような振る舞いをしているか確認してみました。
元の画像は、マクベスチャートを電子データとして作成した疑似マクベス
この画像に対して、彩度+50と自然な彩度+50をしてみます。
画像だけだとよくわからないので数値で見てみます。
a*b*平面上での各パッチの色。
座標の原点部分が無彩色、
外側に行くほど彩度が高くなります。
色空間として一般的によく使われる
YCbCrではなくL*a*b*空間を用いました。
これは、a*b*平面のほうが、
座標上の距離と人間の視覚で感じる色の違いが一致するためです。
図の見方は、赤の点が元のマクベスの色の24色をプロットしたもの。
青が、自然な彩度+50にした画像のパッチをプロットしたもの。
緑が彩度を+50をしたものです。
「彩度」を上げるとどの色も一律に赤点から外側に移動しています。
当然、もとから外側にいる点(彩度が高い色)は移動量も大きくなります。
「自然な彩度」の青いプロットの点を見ると、
点の移動がパッチごとに異なっています。
グラフ上の赤い丸で囲ったパッチは「彩度」と「自然な彩度」で
結果が大きく異なっているパッチです。
オレンジ-マゼンタ系の色は「自然な彩度」では
あまり変化がありません。
オレンジ-マゼンタ系の色は
肌色が含まれるので、この辺りは彩度を高めてしまうと
人物写真で不自然になってしまうので、変化させていないのだろう。
また、緑のパッチも「彩度」に比べて変化が少ない。
青系のパッチは「彩度」も「自然な彩度」も同様に変化しています。
赤矢印は前述のa*b*平面グラフで赤丸で囲った色です。
青矢印は「自然な彩度」を+50したら輝度が下がった部分です。
彩度を上げたり下げたりしても、輝度は変化しないはずですが、
「自然な彩度」を上げると、青系の色の輝度が下がっています。
おそらく、輝度をあえて下げることで、色が濃くなったように見せて
彩度が上がったかのような効果を出しているのだろう。
このように「自然な彩度」では
色相ごとに彩度の変化を変えたり、輝度も変えたりして
かなり複雑なことをやっています。
ところで、色というものは
同じ色相でも、輝度が異なるとかなり違った色に見えます。
なので、「自然な彩度」でも輝度ごとに
異なった処理を行っているかもしれない。
疑似マクベスの輝度を上げた画像と下げた画像を用いて
動きを確認。
高輝度では「彩度」を上げると
彩度の上り幅が大きい(グラフ上でかなり外側に点が移動する)
しかし、「自然な彩度」では赤丸で囲った部分は
彩度の上り幅がそれほど大きくありません。
輝度が高くても彩度が一気に上がることを防ぐような処理になっている。
特に肌色は輝度が高くても彩度が上がらないように気を配られています。
やはり、青-マゼンタ系の色は輝度を落として
濃く見せるような処理になっている。
輝度ダウンをした画像では
「彩度」も「自然な彩度」もどちらも
大きく外側に広がることがありません。
これは、低輝度かつ高彩度な色がないためです。
下のリンク先は、L*a*b*空間を3Dで示した図です。
これを見ると、下のほうの低輝度部分では
細くなっていて、彩度の広がる幅に制限があるのがわかる。
「自然な彩度」では「彩度」よりも
さらに広がる幅が減っていて、
低輝度領域では彩度をほとんど上げない処理をしてる模様。
「彩度」を上げたときに色相が回ってしまっているのは、
表現の幅の端に当てついて、色が回ってしまったのだと考えられます。
「自然な彩度」では色相の回転はあまり起こらない。
結果:
「彩度」の項目は単純にマトリクス演算で彩度を上げているだけ。
「自然な彩度」では3DLUTなどを用いて
どの輝度でどの色相をどのような色に変えるのか、
画像処理技術者がかなりチューニングを行っているものと考えられます。
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